造園設計施工例

再生古民家の庭つくり~千葉県佐倉市 平成24年9月竣工

 敷地面積800坪。歴史と文化の佐倉市、再開発に伴って失われた森を敷地の中に再現しようという試みです。
もともと敷地にあった庭石を再生利用し、そしてこの地にあった入母屋民家を解体して、その古材を用いて新たな民家を再生しました。
 ここで紹介します写真は施工直後のもので、今後月日をかけてこの庭を自然環境として育ててゆくのです。
これからの庭つくりは、木々と住まいを共存させながら、「自然環境として育ててゆく」という視点がますます大切なものになるでしょう。




 築40年の入母屋民家を解体し、その材料を再生して入母屋の離れ屋を作り、庭を新たに構成しました。
流れのある、どこか懐かしい庭になりました。

 


 




 流れの下流から再生した入母屋の離れ屋を振り返る。
 流れに用いた石も手水鉢も、石材はもともと解体前の庭にあった材料を再利用して構成しています
 
 









 

 








 かつての民家には、外と中との中間領域が心地よく配されます。
広縁を挟んで外の雰囲気が切り取られ、木漏れ日と共に室内を潤しています。
  住まいの中と外との心地よい接し方が、心地よい住空間をつくります。





 


 








 
森の小道を登りきると、お施主のAさン家族が住まれる母屋の庭に至ります。
 木々越しに見る家屋の佇まい、樹木の存在は家屋の見せ方をがらりと変えていきます。







 西側に面した母屋の窓。夏の西日を緩和するために家の周りに雑木の木立を配します。
 点在する木立が景色として繋がり、庭をより広々と感じさせてくれます。









 




 母屋の奥庭は、近い距離で正面のマンションと対面しています。
 近景の木々、境界の木立、そしてそれらが生み出す明暗と木漏れ日が、お互いの窓をあまり気にならないようにしてくれます。









 

洗濯小屋も、入母屋民家解体材の残りを用いて作りました。
 かつての民家は素晴らしい古材の宝庫です。








 

 




 隣接道路から見た、再生古民家。そのボリュームを木々越しに緩和して、街の風景を潤わせていきます。
 これらの木々は、年月をかけて大きく育てて、街や家屋を包み込む大きな森にしていきます。






 

 城下町佐倉市にふさわしい景色とするため、塀は真壁の漆喰仕上げとします。
 塀の瓦も、解体民家の古材を使用しています。
 古材を庭に扱うことで、過去と未来を繋げていくのです。

 右手前は新たに建てた車庫兼倉庫。その材料もすべて、解体民家の古材を用いています。
 どんな建物も、佇まいの良さが大切です。向きやスペースの取り方に配慮して、木々を配して家の佇まいを落ち着かせていきます。

 10年後、20年後の未来の風景。歴史ある佐倉市も、貴重な民家や森も畑も次々に失われ続けています。そんな中、ここに豊かな森とかつての民家の風景を育ててゆくことで、過去の佐倉市の良さを未来に発信するのです。