晩秋の雑木 平成22年12月5日
地元にほど近い千葉県市原市のダム湖 山倉ダムの周辺は、千葉県の緑地環境保全地域に指定されています。
ダム湖の周辺はコナラやクヌギを中心とした美しい雑木林で覆われていますが、その全域は県や市の当局によってネットフェンスが張りめぐらされています。美しい雑木林を守るためにここまでしなければならないかと思うと、やり切れない思いに駆られます。
千葉県市原市の里山は、今や産業廃棄物不法投棄天国となっており、東京はじめ近辺の都県から大量の産廃が山林に不法に投棄されています。
数年前に実施された地元の民間団体の踏査結果によると、市原県内の山林内に産廃不法投棄された現場は960か所も確認されたそうです。
アクアライン通行料の値下げによって隣接する都県から持ち込まれる産廃の不法投棄はいまだ増え続けているようです。
千葉の美しい山林を破壊しているのは産廃の問題だけではありません。羽田空港拡張など、東京湾埋立てに用いる大量の土砂は、千葉の山を切り崩して持ち出されます。
都心に近い自然豊かな県の宿命と受け止めるには悲しすぎるし、つらいことです。
厳重な柵を広大な森の全域に張り巡さねば産廃不法投棄を防げないという現状を、皆さまはどう思われるでしょうか。
晩秋の日差しに輝くコナラの黄葉。
私の庭つくりの主役はコナラなので、1年の活動を終えてわずかな休眠に入るコナラの木々に感謝の気持ちが起こります。
雑木林の構成樹種のなかでもコナラほど、住宅地の環境改善に最も適した扱いやすい樹種はないと思います。
伸長成長もクヌギに比べれば穏やかで、枝葉の直射日光の遮蔽効果もソロやヤマボウシなどよりも効果的です。また、モミジに比べて虫害に強く環境適応力が高く、ヤマザクラほど競争心旺盛でもない分、環境共存性が高く、また、ケヤキのような自己中心的な性格もありません。(何もケヤキを悪く言っているわけではないです・・・。私の会社のロゴマークがケヤキの種のモチーフであるように、私がもっとも親しみを感じる人生の思い出の樹木の一つはケヤキですので・・。念のため・・。)
そして、狭い環境や密集した環境下でも、限定された空間にもしぶとく枝葉を伸ばして自分らしく生きようとします。
そして幹の美しさ、風に揺れる葉音の躍動感、木漏れ日の美しさ、ドングリ、なんといってもコナラは素晴らしい雑木です。
広ければ広いなりに、狭ければ狭いなりに、どんな環境でも柔軟に生きて、そして共存共生を志向する樹木、それがコナラです。
私の庭はコナラなくしてあり得ません。今年だけで3百本以上のコナラをあちこちの庭に植えてきました。
コナラさん、今年も1年間ごくろうさま。そんな思いを込めて、この1本のコナラの木に全ての感謝をささげました。
そして、雑木林の林縁に点在するのはセンダンの木です。黄色い実をつるした姿が師走の風情を彩ってくれます。
センダンの実です。葉を落とした樹木の枝一面にぶら下がる光景は晩秋の風景です。
そういえば、今年最初の植栽工事となった千葉県四街道市の庭、お施主にせがまれて隣接道路の公共緑地帯に無許可でセンダンの木を植えたことを思い出しました。
「ここにセンダンを植えて」と私にねだったそのお施主様もきっと、センダンの実の光景に大切な思い出があることでしょう。
四季折々に表情を変える自然樹木は、人の心象風景をたくさん刻みながら生きていくようです。
楽しい思い出、美しい思い出、悲しい思い出、つらい思い出、それもすべて人生です。いつか全てが美しい思い出に変わることを、木々は祈ってくれるようです。そして私たちに謙虚な力を与えてくれるのも木々です。
今この時間、私がこのダム湖の木々に面した今の心境も、この光景に刻み込まれることでしょう。全てを受け止めてくれる木々に感謝です。