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庭の病虫害対策について その2   平成23年7月17日

 農薬に頼らない庭の病虫害対策について、第2話を始めます。

 先ず、我々人間が、想像を超えるほどの膨大な種類の生き物との繋がりの中で、初めて存在し得るのと同様、木々も、様々な虫や鳥などの小動物はじめ、微生物や菌類、周辺の植物たちとのつながりの中で初めて健康な命を繋ぐことができるということを知る必要があります。
 
 今、都会の大人も子供も、日々自然と接しながらの暮らしが大変希薄になりました。
 大人の皆さん、野山で遊んだ私たちの子供のころの記憶を思い出してみてください。
 30年前、あるいは40年も前、当時はまだ里山も田畑も美しく管理され、そこは子供時代の私たちの遊び場だったことでしょう。
 野原にはバッタやカマキリ、蝶やトンボを追いかけ、電線にはスズメが連なり、そして夏の早朝にはキジバトの声、日中の蝉の声、夕方の虫の音が、記憶の片隅に耳の奥から聞こえてきませんか。
 田んぼや小川で泥だらけになってカエルやザリガニを追いかけた記憶、タニシやミズスマシ、そして稲を踏み荒らして農家のおっちゃんにひどく怒られた記憶、、、。
 小川にはメダカにタナゴ、フナにドジョウ、、雑木林に虫を追いかけて、カブトムシを捕まえるために毎朝、暗いうちに雑木林に分け入り、樹液に群がる虫たちを追いかけた日々。
 ミミズもダンゴムシも、毛虫も青虫も、皆子供の頃のお友達だったように思います。

最近、雑木の庭が都会を中心に、庭造りの主流となってきました。こうした傾向は、生活の中から自然が遠ざかるに伴い心が渇き、その果てに、失われた自然とのつながりを再び庭に求めようとしているかのように思います。つまり、記憶の中の身近な自然風景を庭に再現しようとしているのではないでしょうか。
 これまでのように人工的な庭、縮景的な自然のデフォルメではなく、ありのままの里の自然との共生を求め、そして庭に自然らしさが要求されるようになりました。

 しかし、虫たちのいない自然など、あり得ません。庭において健康な木々の恩恵を得ようとするのであれば、自然界のつながりを知り、そして尊重しなければなりません。

 農薬は、庭の生き物の循環を全て断ち切ってしまいます。わずかな種類の害虫を退治するために、何千何万種もの生き物たちをも一網打尽に殺傷するのが農薬です。

 雑木の葉を食べるマイマイガの幼虫。毒はないので毛に触れてもかぶれません。かわいい顔をしています。
 後に説明しますが、人に危害を加える有毒な毛虫など、実際には数える程度しかいないのです。虫の性質を把握することによって、庭の生態系というブラックボックスを紐解いていきましょう。それによって雑木の庭の楽しみは何倍にも膨らみます。

 庭に住み着くムクドリ。雑木の庭には様々な野鳥が住み着きます。彼らも人との共存を求めているようで、近くに人が来ても逃げません。この、小鳥の緊張感のなさがまた、和みます。
 こうした小鳥たちは毛虫たちを食べて、そして庭に糞を撒いてくれます。

 農薬を撒く庭には当然小鳥は住み着きません。また、毛虫を全て抹殺すれば、小鳥も来なくなります。
 人に対して無害で、しかも木々に対して甚大な被害を与えない虫たちは、わざわざ全てを退治する必要はありません。
 私たちはこうした毛虫は、気付いた時に補殺する程度で、あとは鳥の餌として残してもよいと考えています。小鳥が住み着けば、害虫の大量発生はほぼなくなります。

 害虫を食べてくれる小鳥の水飲み場として、庭に水鉢を据えます。小鳥はきれいな水が好きなので、水鉢にはメダカを放して水を浄化させます。

 鳥に食べられたシロスジカミキリの食べ残し。カミキリムシは雑木の天敵です。幹に穴をあけて産卵し、幼虫は幹の中を食い荒らしてしまいます。
 そんなカミキリも鳥たちにとっては格好の餌となります。

 カミキリが産卵のために開けた穴。二つの穴のうち、上の穴を見てください。きれいな円形の穴となっています。カミキリムシには、こんなきれいな穴を開けられません。では、この円形の穴は誰が開けたのでしょうか。
 答えはコゲラのようです。カミキリムシが入った穴を発見すると、中の虫を食べるためにコゲラが突いて、きれいな円形の穴に広げるのです。
 健康な樹木はカミキリムシによる穿孔はあると、鳥に感知される独特のにおいを発するそうです。そのにおいを察知して、鳥が幹の中の虫を食べにくるのです。

 かつて私は、キクイムシやカミキリムシの穿孔があった際、中に農薬を注入して虫を殺していました。
 薬剤注入によって、中の虫を確実に殺傷できるのですが、それによって木は若干弱ります。モミジなどは薬剤注入後、パラパラと葉を落とすことがあります。
 そして、薬剤注入した木には、その後も毎年キクイムシなどの被害が続きます。結局は、木を弱らせたうえに鳥などの天敵を農薬によって駆逐してしまうことによって、本来守られるべき木を孤立させて無防備な状態にしてしまうのが農薬です。農薬による病虫害対処がいかに短絡的でその場しのぎのものであるかということが分かります。

カミキリムシの入った穴に針金を突き込み、そして中の蛹を突き刺しました。薬剤に頼らず、こうした物理的な対処が木々の健康を保つ秘訣です。

退治した後、こうした穴を開けたままにしておくと、中に蟻が巣をつくったり、稀にクワガタなどが住み着きます。

 カミキリムシ退治後2週間経過後、穴の中を調べてみたら、クワガタが住み着いていました。
 一応追い出して、そして穴の中に木酢液を噴霧します。これによって蟻などの巣作りを防止します。あとは、木の自然な再生力にゆだねます。

 アブラムシやカイガラムシを食べてくれるテントウムシの幼虫。アブラムシの大量発生を確実に防いでくれます。
 農薬によってテントウムシの幼虫は死滅してしまうので、農薬散布によって、返ってアブラムシなどが大発生してしまうのです。
 アブラムシにしても、「1匹もいてはいけない」という考え方は捨ててください。
虫たちも木々も繋がっているのです。多少害虫がつこうが、それは自然な姿であって問題はありません。アブラムシが全くいなくなったらテントウムシも消えてしまいます。

 私たちは、農薬に頼らない方法で木々を管理しています。こうした管理を実行できるのは、理解あるお客様方々のおかげです。
 「虫がいない庭」という無茶で不自然なあり方から、「虫たちと共存する庭」という、健康で自然な庭の在り方へと、理解を深めて下さるおかげで、私たちの試みが活かされます。

これは、所狭しと並ぶ当社の自然由来の無公害散布液の数々です。

 これは、木酢液によって様々な有効成分を抽出しているところです。
左から順に、卵殻カルシウム抽出木酢液、次がニンニクと唐辛子を竹酢液で抽出しているところ、右端はニンニク抽出木酢液です。
 こうした自家製の液材を、病虫害対策や微生物環境の活性、根の発育増進、拮抗作用による病原菌の抑制などに用います。

そしてこれは、ニンニクと激辛唐辛子を漬け込んだ竹酢液の市販品です。農薬の被害が周知されるようになる中、こうした自然由来の無公害薬剤が数多く市販されるようになりました。よい傾向だと思います。

木々の状態を見たうえで、目的に応じてこうした自然薬剤を配合し、散布液をつくります。
これはドクダミ抽出竹酢液をスポイトで計量して配合しています。

さらに、植物抽出の植物活力剤を混合します。

 そして、庭の木々に散布します。これによって殺菌作用と同時に木々の活動を活性化させ、そして葉面の有用微生物を増やすことによって病虫害への対抗力をつけます。
 木々を含めて庭の生態系を健全化してゆくことによって、病虫害の深刻な被害を予防するのです。

 半自然空間としての雑木の庭の健康維持のために、土壌微生物活動を活性化することも、病虫害対策の一つと考えます。
 写真は、土壌に鋤き込む土壌改良資材を配合しているところです。
 ベースは、粉末状にした木炭です。

粉状木炭に若干の有機物資材を配合します。

配合する有機物資材はいろいろ試していますが、今年はこれを使っています。
元気根っこバイオといい、様々な動植物資材を濃縮配合しています。

更に、植物活力剤兼微生物活性剤として、HB101粒剤を混ぜます。

そして木の根元付近に数ヵ所づつ、深さ50センチ程度の穴を穿っていきます。



 この穴に、配合した土壌改良資材を入れてゆくのです。
ここから土中奥深くまで空気を送り込み、多孔質の木炭を微生物のすみかとします。これが土壌中の生物環境を徐々に改善します。

ただし、アルカリ性の木炭はそのままでは微生物のすみかになりにくいため、木酢液を流し込み、資材に浸み込ませることでPHを調整します。 
 木酢液が自然に薄まると、それはやがて微生物の餌となります。

 半自然空間としての雑木の庭。それぞれの木々にとって居心地の良い環境をつくりやすいように配植することも、主要な病虫害対策といえます。 
 見た眼ばかりでなく、お互いの木々によって守りあうような植栽です。

 もともと森の中で生育した雑木には、下枝がありません。森の環境では林内が木陰となるため、下枝が枯れあがってすっきりした樹形となります。
 下枝のない雑木を日当たりのよい庭の中に一本だけで植栽したら、幹にダイレクトに夏の日差しが差し込みます。樹木はむき出しの幹に日が当って乾燥し、移植直後の木を弱らせてしまいます。
 それを防ぐために、こうした雑木を数本単位で寄せ植えすることで、お互いの木陰を利用するのです。
 また、寄せ植えすることでお互い影をつくりあうため、それがそれぞれの樹木の生長を無理なく抑制することにつながるのです。
 また、大きな木陰が雑草を抑制するばかりでなく、夏の直射日光が地面を暖め過ぎることがないため、土壌生物活動は森の中のように活発になるのです。
 土壌微生物にとって、直射日光による地温の上昇は有害無益で、土は育っていかないのです。
 野原の土があまり育っていかないのに対して、森の中の土が育ってゆく理由の一つはそこにあるのです。

半自然空間としての雑木の庭。雑木の恩恵を住環境に最大限に生かすためには、木々を取り巻く生物環境から考えてゆくことが必要に思います。

 真夏の我が家。木々の木陰によって夏の暑さを緩和し、いまだエアコンなしの生活です。
 不自然な空調に頼ることなく、自然の力を活かして快適に生活すること、本当の豊かな暮らしはそんなところにあるような気がします。

我が家の菜園では、小さなひょうたんが日に日に膨らんでいきます。

 スイカも少しづつですが、確実に大きくなってきました。

 今年最後のヤマモモの実。これは夏バテ防止のジュースにします。ここ3週間くらい、ヤマモモの収穫に追いかけられました。

 畑作業は私の大切な癒しの場です。木々を扱う仕事、本当に幸せな仕事と思いますが、しかし、仕事である以上、様々なストレスも生じます。
 こうしたストレスを、庭の木々や菜園の実りが癒してくれるのです。
 こうした場をより多くに人に提供していきたいと思いつつ、仕事に追われてしまうのですが。

 庭の一角には自家製落ち葉ストック。落ち葉雑草、そして野菜くずや米ぬか、米のとぎ汁がここで豊かな腐葉土に変貌します。そしてまた、畑に還して作物を育てます。

 生き物との確かなつながり、それが雑木の庭の魅力の一つです。

 農薬の使用は生き物のつながりを断ち切ります。こうしたその場しのぎな社会の在り方を見直す必要があるのではないかと思います。

株式会社高田造園設計事務所様

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