お知らせ

被災地を訪ねて      平成23年5月20日

 震災被災地での災害復旧活動を昨日終えて、帰宅したのは本日の午前2時になりました。
 今回私たちは、激しい津波の被害を受けた宮城県石巻市で、継続的な復旧作業に当たっている団体「庭ジャパン」の被災地活動のお手伝いのため、高田造園設計事務所、松浦造園、文造園事務所の有志7人での参加となりました。

 

 現地到着した日の夕方、津波で壊滅した住宅地を訪れました。

 この一帯は地震による地盤沈下のため、満潮時には道路が冠水し、衝撃的な光景が、いまだ手つかずのままに広がっていました。
 津波の直前まで、ここは家々が立ち並ぶ海辺の住宅街だったのです。
大津波は一瞬にして、この街の暮らしの全てを破壊し尽くしていきました。

 壊滅した住宅地のそばの、廃墟となった小学校では、いまも自衛隊による捜索活動が続いていました。
 変わり果てた小学校の様子、子供たちの声が聞こえるようで、じっと見ていることすらできません。涙が溢れてきます。

 この学校のすぐ背面、丘の上の家屋は全くの無傷で、何事もない光景。まるで天国と地獄を隣り合わせに見ているようで、不思議な現実を実感します。
 これが津波の被害というものです。津波の恐るべき破壊力は、その爪の届く範囲を容赦なく破壊し、その反面、津波の及ばぬ場所は全く何事もなかったように静かな光景なのです。

 被災したアパートの室内。ここも今だ手つかずのままです。堆積したヘドロが悪臭を放ち、風が吹くと微細な粉じんが衣服を通して肌に突き刺さってくるようです。
 
 とにかく、この汚泥にまみれたがれきやヘドロを撤去しなければ、街の再生は始まりようがありません。

 壊滅的な被害を受けた街や地域が東日本沿岸の広範囲に点在する中、がれき片づけなどの復旧作業の主力となっているのが、全国から駆けつけた大勢のボランティアの方々です。
 ここは、石巻災害ボランティアセンター本部が置かれている石巻専修大学、ボランティアキャンプです。
 本部では、1日平均1000人程度のボランティア方々の作業を統括し、被災地活動を円滑にするための、様々な業務を統括しています。

 本部には、全国様々の地域、団体からの、被災者への応援メッセージ寄せ書きが所狭しと貼られていました。
 一つの日本、一つの世界を実感します。こうした応援が被災者方々を勇気づけることにつながります。それがこの街に住む方々の希望につながります。

 そして、私たちに与えられた作業は、海岸近くで激しい被害に見舞われた家屋敷地に散乱する、がれきやヘドロの撤去です。
 海岸沿いの製紙工場に近いこの敷地には、流されてきたパルプロールや原木丸太、そして車などが折り重ねり、まさに戦場跡の様相です。

 まずは折り重なるがれきを次々に積み込み、搬出します。

 ヘドロや細かながれきは1t袋に詰めてクレーンでコツコツと積みだします。

 倉庫の床にたまった真っ黒なヘドロは手作業で掻き出すしかありません。
 猛烈な悪臭を放つ黒い物体、これが黒い津波の正体です。
 様々な汚染物質を含んで海底に堆積したヘドロが、自然を汚しつ尽くす文明へのしっぺ返しのように、津波となって押し寄せたのかもしれません。

 町から搬出したがれきや土砂は、海岸沿いに集められました。集積地は粉塵が舞い、匂いが漂います。
  石巻市だけで100年分のごみが、今回の震災で発生すると言います。埋め立てるしかないのでしょう。この状況では分別収集どころではありません。 
 こうして、美しかった国土も汚れていきます。津波のせいではありません。自然は自然そのものであり、母なる自然であることに何の変わりもありません。
 やはりどこか、私たちの文明生活そのものを見直さねばならないのではないか、そんな気がします。

 

 がれきを片付けた後は、表土を覆うヘドロを重機で掻き出し、整地していきます。

 作業の末、こうして敷地の一角はがれきもヘドロも取り除かれて、更地の状態へとほぼ復旧されました。

 私たち庭師の仲間と、そして被災家族の皆さんとで、お別れの記念撮影です。皆とてもいい顔をしています。被災者家族の皆様も、いい笑顔を見せてくれました。
 嬉しい笑顔です。

被災者のご主人が言いました。

「津波の後は『もうどうにもならない。』と諦めかけてきたけど、皆ボランティアのおかげでここまで元通りにしていただきました。
 本当に何とお礼を言ったらいいのか分からないけど、あなた方ボランティアのみなさんのおかげで、『またこの土地でやっていけるかもしれない。』という希望を与えてもらいました。
 またいつでも来て下さい。今後は作業に来るのではなくて、お茶飲みにでもコーヒーを飲みにでも、ご飯食べにでもいいから、いつでも来てください。」

 そんなことを言ってもらえて本当に来てよかったです。被災者方々に、逆に私たちが元気をいただき、感謝の気持ちが湧きあがります。

 今は亡き私の父の言葉を思い出します。あれは、私の姉が学生時代、福祉ボランティアに参加することを父に話した時です。

「人を助けようなんて思いあがった気持でボランティアに行くのならやめたほうがいい。人が困っていたら手を貸すのは当たり前のこと、それも実際には、ほんのちょっとばかり力になれるくらいなものなんだ。」

 被災者方々と心と体を一つにして作業する。このことが私たち一人一人にとってのかけがえのない経験になり、大切な心の肥やしになります。それがこの活動に参加した各々にとっての、何よりの成果と言えるかもしれません。

 今回、人の力というもののすごさに、今更ながら驚嘆した思いです。破壊しつくされた街が、多くの人たちの無償の行為が結集し、それが大きな力となって、徐々に被災した街が片付いていくのです。
 そして、そのことがこの地に住む被災者方々の希望の光にもなるのです。

 「自分一人が行っても何にもならない。」と思って、被災地活動を躊躇されている方がいらっしゃいましたら、とにかく現地に行かれることをお勧めしたいと思います。
 行かねば分からないし、行けばやるべきことが必ず見つかります。
 確かに一人ひとりの力は微力でも、駆けつける多くの人の力が集めれば、それがとても大きな力になります。諦めることが最大の敵なのかもしれません。

 私たちを被災地に導き、とてもよい経験をさせていただきました関係者皆様に心より御礼申し上げます。
 庭ジャパンでの被災地活動は6月5日まで続きます。今後も多くの方々のご支援ご協力をお待ち申し上げます。

 

株式会社高田造園設計事務所様

お問い合わせはお気軽に

千葉市にお住いの方で
造園の設計・施工、雑木の庭のことならお気軽にご相談ください。

ページの先頭へ移動