千葉市中央区の庭 完成 平成26年8月5日
千葉市内の住宅地に新築されたOさんの庭の造園外構工事が先週完成しました。最近よくある、敷地いっぱいに家が建ち、庭としてまとまったスペースが取れない、街中の限られた敷地での造園外構です。
狭く制約の大きい庭ほど、材料の取り合わせや空間配分の工夫次第で、見違えるほど奥行きとゆったり感のある住環境が生まれます。
こうした場所ほど、設計の技量と空間を扱う熟練度が、住まいの心地よさ大きく左右する分、やりがいもあります。
また、こうした狭い場所で木々をいつまでもすっきりと管理していきたいと思えば、密植してゆく雑木植栽の手法が活きてきます。
正面道路に面して、玄関ポーチまでわずか2mもない上に、道路からポーチまでの高低差は約1m。しかも、玄関は正面道路に真正面に向いています。こうした場所では、アプローチ周辺の植栽配置がポイントになります。
ここではアプローチの階段を駐車場側にずらし、玄関の真正面道路際と、ポーチ駐車場側とに互い違いに植栽スペースを配分し、その間に階段を設けて、玄関ポーチの奥行きと落ち着きを演出しました。
階段は、それぞれ独立した洗い出し仕上げのステップを配してその合間に苔を張り、タイル張り玄関ポーチの硬い雰囲気をここで和らげます。
植栽の合間、階段の中間3段目の実用幅をぎゅっと狭くし、木々の合間に収めることで、こうした奥行に乏しい狭い場所で、ポーチの落ち着きと奥行き感を最大限に演出します。
また、独立ステップの段差は15㎝に抑えることで、ポーチから道路までの1mの高低差を感じさせずゆったりと昇降できるよう、配慮しています。
道路に面した西側玄関側の木々。密に植えた木々は競争し、共存しながら、数年後にはこの通りをも潤す森の家となるのです。
玄関脇の緑を駐車場側に張り出し、2台分の駐車スペースを潤します。
駐車場の奥から庭へと伝います。玄関脇の木々、駐車場背面の木々、そして庭の木々が繋がって、この家屋を潤します。
駐車場側からみた南庭。幅2m程度の狭い庭をできる限り広く使いやすくするため、ここでは園路を配しています。木々の中の曲線の園路が、このわずかなスペースで効果的に雰囲気を和らげ、そして奥行きを演出します。
ちなみに、基本設計の段階では、この園路は直線的なテラスの連続で計画していました。施工しながら、「これは曲線にした方がいいな」と感じ、急きょ曲線のラインに変更したのです。
造園設計は、その場の雰囲気を読み取りながら、現場で考えることが基本であって、常に現場に立ち、施工しながら、その場所に合った最善の収め方を絶えず考えていかねばなりません。
そこに創作の余地があり、庭に魂が宿るのです。「設計者とお施主がすべてを決めて、そして設計図面通りに職人が作る」というやり方では、決して本当の意味で魂のこもった飽きのこない庭などできないのです。
信頼関係を持って自由にお任せしてくれるお施主様がいらっしゃるからこそ、魂のこもったよい庭が生まれます。
東側奥庭。狭い庭も、東西南北を一体に作っていけば、広くゆったりと感じられます。
1階、2階それぞれの窓配置を中心に植栽のポイントを定め、そしてその合間に、年月と共に風格と落ち着きを高めてくれる素材で園路を配します。
スペース上、必要な植栽のボリュームが得られない場合、高木樹種の苗を植えて育てます。
1mの苗も樹種の選択と植え方の工夫次第で3~4年程度で2階窓の前に枝葉を揺らすほどの高さの木へと育てることができます。今回もスペースの取れないこの庭の様々な箇所でその手法を用いています。3年後には雰囲気も心地よさもさらに見違えるほどよくなることでしょう。
最初から完成の風景を求めないということも、よい住環境つくりのコツと言えるかもしれません。
生まれたばかりの庭。今後、成長と適切な育成管理によって、この庭は住環境として育っていきます。
庭の完成はよい住環境つくりのスタートなのです。
新築の外構であるにもかかわらず、造園外構工事の着工を気長にお待ちくださいましたO様、どうもありがとうございました。